「ロシア軍がウクライナとの国境付近に大集結している」というニュースが流れました。
ロシア軍がウクライナへの侵攻を今にも開始するのではないかという懸念が高まっています。
なぜこのようなことになったのか、できるだけわかりやすくお伝えします。
ウクライナ首都キエフの現在の様子(ライブカメラ)
目次
ウクライナへのロシア軍の侵攻はなぜ?
ロシア軍がウクライナへの侵攻の構えをみせている理由を簡単に言うと、「ウクライナをNATOに加盟させたくないから」です。
NATOとは?
NATO(北大西洋条約機構)は、ヨーロッパの国々やアメリカなどが加盟する軍事同盟です。
もともとこのNATOは、第二次世界大戦後、旧ソビエト連邦に対抗するための西側諸国の軍事同盟として誕生しました。
冷戦時代、アメリカとソビエト連邦をそれぞれ中心にした陣営が対立していましたが、NATOはこの時のアメリカ側陣営で組織されています。
つまり、旧ソビエト連邦の承継国であるロシアにとっては、自国にとって明らかな敵対組織と言える軍事同盟です。
なお、NATOに関しては、日本も「グローバル・パートナー国」とされ、将来的な加入が期待されています。
ウクライナとロシアの関係
ウクライナは旧ソビエト連邦の国で、ロシアの隣国に位置します。
上記の地図のとおり、ウクライナはロシアのすぐ西隣にあり、その西側はNATO加盟国がたくさんあるヨーロッパに通じています。
地理的に見ると、ロシアにとってウクライナは最も重要な緩衝地帯と言えます。
この「最も重要な緩衝地帯」を、対抗組織とも言えるNATOに抑えられることにロシアは危機感を覚えています。
現に、ロシアのプーチン大統領は2008年に行われたサミットの席で、「もしウクライナがNATOに加盟することがあれば、ロシアはウクライナと戦争をする準備がある」と公然と言い放ちました。
当時のプーチン大統領の発言のとおり、2022年になってロシアがウクライナに侵攻しようとしているというのが現在のウクライナ情勢です。
ウクライナとロシアの問題
もともとウクライナは旧ソビエト連邦に属していましたが、旧ソビエト連邦崩壊をきっかけに独立します。
独立当初は、親ロシアの国でしたが、2004年に「オレンジ革命」と呼ばれる事件が起きます。
これは、ヨーロッパとロシア、両方に挟まれたウクライナがどちらとの関係を重視するのかという判断を迫られた大統領選のことです。
結果的に、ヨーロッパ・アメリカなどとの関係を重視するユシチェンコ氏が勝利し、大統領に就任します。
このオレンジ革命後、ロシアとウクライナの関係は悪化していきます。
最近のウクライナをめぐる情勢
クリミア併合
2004年以降、親ヨーロッパ派の大統領が就任し、関係が悪化してしまったロシアとウクライナですが、その後の大統領選で親ロシア派の大統領が誕生するなど、決定的に仲が悪くなったわけではありませんでした。
しかし、そうして出来た親ロシア派の政権もEUとの政治・貿易協定への調印を見送ったことを理由に起きた反政府運動によって倒れます。
このとき、ウクライナでは暴動が起き、ロシアはそれを抑えるという名目で軍事介入を行います。
そしてその軍隊をクリミア半島に進軍させ、「現地のクリミア住民による自警団」に見せかけて駐屯させます。
ウクライナで誕生した新政権と親ヨーロッパ・アメリカ派の国民はこれを侵略行為だとして強く反発しましたが、政権交代を繰り返すくらいですので新ロシア派の国民も一定数おり、その人達はロシア軍を歓迎します。
その後、ロシア軍がいる状態で、クリミアで住民投票が行われました。
この住民投票はクリミアの独立とロシアへの編入の是非を問うもので、ウクライナの法律を無視して行われました。
結果的にロシアへの編入が選ばれ、クリミアはロシアの一部となりましたが、「ロシアが行ったことは実質的に侵略行為で、国際法に違反するため編入を認めない」と欧米諸国や日本が制裁を発動するに至ります。
これが2014年に起きた「クリミア危機」と呼ばれる事件です。
なお、現在のウクライナ大統領はクリミア奪還を目指しています。
ロシア軍の侵攻準備
クリミア併合によってロシアとの関係が悪化したウクライナは、親欧米派・反ロシア派の立場を鮮明にします。
両国の関係はその後も改善することなく、ウクライナとロシアの間で結ばれていた友好協力条約は延長されずに期限切れを迎えてしまいました。
2021年9月、ウクライナはアメリカにNATO加盟の支援を要請しました。
それを受けて翌10月、アメリカはウクライナのNATO加盟を支援することを表明しました。
このアメリカによるウクライナのNATO加盟支援の発表の翌日ごろから、NATO・アメリカ軍とロシア軍のにらみ合いが始まりました。
2021年12月からロシアはウクライナとの国境付近に大軍を集結させはじめます。
その数は2022年1月現在で12万人とも言われています。
これは国境警備の規模を遥かに超えており、侵攻目的の軍隊であることが明らかであるとされています。
それどころか、ロシアは圧倒的な軍事力で短期で決着をつける構えをみせています。
ウクライナの軍隊の規模を考えると、他国(NATOやアメリカ軍)の援軍がない場合、一週間から10日ほどでウクライナ全土が侵略されるものとみられています。
現在、各国が外交によって軍事衝突を避けようと動いていますが、今後の情勢は不透明なままです。
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