国連総会が「安保理常任理事国の拒否権行使に説明責任」を求める決議案を採択しました。
常任理事国の拒否権行使の説明責任とは?
今回採択された「常任理事国に説明責任を求める」決議は次のような内容です。
- 国連安全保障理事会の常任理事国が拒否権を行使した場合、総会議長が国連総会を10日以内に招集するように義務付けられました。
- その総会で拒否権を行使した理由の説明が求められます。
- また、国連安全保障理事会へ特別報告書の提出が求められます。
この決議は、ロシアのウクライナへの侵攻を受けてのものです。
侵攻が始まった直後に安全保障理事会で非難決議が審議されましたが、当事者であるロシアの拒否権行使で決議が採択されませんでした。
こういった事態を避けるための説明責任創設だとされています。
この決議は国連総会で日本を含む80カ国以上が共同提案国となり、無投票で4月26日に採択されました。
常任理事国に説明責任で効果はある?
では、この「説明責任」にどれくらい効果があるのでしょうか?
残念ながら今回採択された「拒否権行使の理由の説明責任」だけでは、拒否権の濫用を防ぐ効果はほとんどありません。
まず、拒否権を行使した後、10日以内に国連総会が開かれることになりますが、「拒否権を行使した国」がその総会に出席しなければならないという義務がありません。
さらに、その総会に出席したとしても、拒否権行使の理由の説明は義務ではありません。
つまり、「拒否権行使の理由の説明」は、未だ「してもしなくても良いもの」という取り扱いに変わりはないということです。
効果があるとすれば、「他の国から説明を求められるかもしれない」というプレッシャーがかかるというくらいのものです。
不当に拒否権を行使して、さらに説明責任を果たさなくても何のペナルティもありません。
ただ、今回採択された「説明責任の創設」自体にはあまり効果がないものとみられますが、「今後、不当な拒否権行使を防止するための制度を作るための前進」と見れば意味のある決議だったと言えるのかもしれません。
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