現地時間3月11日、アメリカのニューヨークで国連安全保障理事会の緊急会合が開かれました。
この緊急会合はロシアの呼びかけで開かれたものです。
目次
国連安保理緊急会合の内容
この国連安全保障理事会緊急会合の内容は、「ウクライナで生物兵器や化学兵器の研究・製造が行われている」とロシアが国連に報告するというものでした。
ロシアが占領したウクライナの研究施設などから、その事を示す文書が見つかったため、国連安保理の緊急招集を要請したとのことです。
この会合では各国からロシアに対しての非難が相次ぎ、特に何かの決議が採択されるということはありませんでした。
ロシアの生物兵器をめぐる主張
ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使の主張は次のようなものです。
- ウクライナ国内に少なくとも30の生物実験室がある
- そこで、ペストや炭疽(たんそ)菌、コレラなどの毒性を強化する危険な研究が行われている
- 人へウイルス病原体を感染させることを目的とした非常に危険な生体実験が行われている
- その研究には、アメリカが資金提供している
なお、ロシアはこの主張を裏付ける証拠は何も示していません。
各国の反応
ロシアの主張に対する各国の反応はロシアがでたらめな陰謀論を広めているというようなものでした。
各国大使などの発言は次のようなものです。
- ロシアが安保理に会合を要請したのは、ウソをつき、偽情報を流すためだけだ
- ウクライナが生物兵器を持っているという信頼に足る証拠は一片もない
- 国連はいかなる生物兵器計画も把握していない
生物兵器・化学兵器製造という重大な主張をしたにも関わらず、証拠を何も示さないことから非難が俗シュシュしています。
これに対しロシアは、
- 思想誘導という非難は予想通りだ
- 私たちは戦争を終わらせたいのだ
と反論しています。
ロシアの狙い
ロシアはなぜ、わざわざ安保理を招集してまで信じてもらえないような主張をしたのでしょうか?
ロシアの狙いは2つあると見られています。
ウクライナ支援者へ揺らぎを与え、ロシアへの非難を弱くする
1つはこの主張をすることで、「本当かも知れない」と揺らぐ人々が一定数出てくることを期待してのことです。
ロシアに対する風当たりを弱くする狙いです。
証拠を示していないので信憑性は低いのですが、「国連安保理の緊急会合で主張をした」というのは事実です。
すると、不思議と「全くの嘘をこんな場でつくだろうか?」との思考が頭の中に浮かんできます。
特に今は「侵攻したロシアが悪者、ウクライナが一方的な被害者」という報道が毎日のように流れ続けています。
通常、ケンカをした両者のうち一方が100%悪いということは殆どないことを我々は経験的に知っています。
そこへ「ロシアが100%の悪者ではない可能性」を示すことで、ウクライナを支援している人に一定の揺らぎを与える事ができます。
これからロシアが生物兵器や化学兵器を使うための布石
今回ロシアが国連安保理で生物兵器・化学兵器の存在をアピールしました。
ウクライナには、これらの兵器があると主張しています。
ということは、今後、ウクライナで生物兵器・化学兵器の被害が出たとすれば、それはもともとウクライナにあったものだ主張することが可能となります。
「ウクライナにもともとあった生物兵器・化学兵器の研究所が暴発」、もしくは「ウクライナ軍が生物兵器・化学兵器を使用した」と主張し、「先日国連で報告したとおりだ」と言うことができるようになります。
たとえそれがロシア軍が使用した生物兵器・化学兵器であったとしても同じことが出来ます。
ロシア外相は先日「ロシアはウクライナに侵攻していない」と平然と言い放っておりますので、ロシアが生物兵器・化学兵器を使用した上で、それをウクライナのせいにするということをしてもおかしくはないでしょう。
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