日本政府がロシアに対する経済対策として、最恵国待遇の撤回を決めました。
最恵国待遇からのロシア排除はG7首脳から提案されたもので、すでにカナダは実施、アメリカも関連法案の調整をしています。
この「最恵国待遇の撤回」とは一体なんのことなのでしょうか?
最恵国待遇とは何か?わかりやすく言うと…
最恵国待遇とは、「通商条約などにおいて、ある国が別の国に対して最も有利な待遇を受けることを約束すること」です。
簡単に言うと、「貿易で、あなたの国を一番良い条件で扱います」という待遇のことです。
ただし、「一番」とは言いながら、世界貿易機関(WTO)に加盟している国は、基本的に他の国にも最恵国待遇を与えなければいけません。
つまり、WTO加盟国は「各国が出している一番いい条件」をそれぞれの加盟国間で適用し合っているということです。
差別を受けることなく公正な貿易をするために重要な役割を果たしているWTOの原則です。
ロシアへの制裁として最恵国待遇を撤回
ロシアは2012年8月22日にWTOに加盟しています。
本来であれば、各国から最恵国待遇を受けられる立場なのですが、今回のウクライナ侵攻の制裁として、いくつかの国がロシアの最恵国待遇撤回を検討しています。
2022年3月11日にG7の主導で「WTO加盟国のロシアの最恵国待遇撤回」が提案されました。
これに先立ち、カナダでは3月3日にすでに「最恵国待遇撤回命令」を交付し、関税を引き上げています。35%もの高関税を課す予定とのことです。
アメリカでも現在、連邦議会において「最恵国待遇撤回のための法案の策定」が行われているところです。
日本も3月15日、歩調を合わせてロシアの最恵国待遇撤回を決めました。
ロシアへの制裁効果
各国が最恵国待遇を撤回することでロシアはどうなるのでしょうか?
最恵国待遇撤回の一番大きな効果は、関税の引き上げができるようになることです。
関税とは輸入品にかけられる税金のことで、これが高くなるとその国から輸入した品物の値段がその分上がります。
値段が上がれば当然売れにくくなります。
売れにくくなれば輸入自体が減少します。
ロシアから見ると「外国に物が売れない状態」ができるということです。
物が売れないと当然お金が入ってきません。
ロシアが「戦争で毎日多額のお金を消費しているのに、輸入品が売れずに費用の調達ができない」という状態にさせるための制裁です。
最恵国待遇撤回で日本にどんな影響が出る?
ロシアの最恵国待遇を撤回することで日本にはどのような影響が出るのでしょうか?
日本はカナダのような高関税を課すことは見送る方針ですが、ロシアが関税の優遇から除外されるとカニやうに、鮭などの水産物の関税は2~3%上がります。
そうなれば、日本で購入するロシア産の水産物の値段がそのまま2~3%ほど上昇します。
日本のロシアからの主な輸入品は、液化天然ガスや石炭などのエネルギーです。
これらの輸入品については、優遇される前からもともと関税をかけていませんので、何も変わりがありません。
しかし、このままでは日本への影響が少ない代わりに、ロシアへの制裁の効果もほとんどないことが予想されますので、日本政府は「関税の引き上げ」ではなく「特定品目の禁輸」も検討しています。
禁輸されれば輸入できなくなるわけですから、その品物は手に入りにくくなり値段が上がります。
今のところ、水産物の禁輸が検討されているようなので、近々日本では魚介類などの水産物の値段が高くなるかもしれません。
コメント