3月21日、ロシアが日本との平和条約交渉の打切りを発表しました。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて、日本政府が発動した経済制裁に反発した形です。
そもそもこのロシアと日本の平和条約交渉とは一体何のことでしょうか?
日本とロシアの現在の関係
まず、日本とロシアは第二次世界大戦後、平和条約を結んでいません。
第二次世界大戦終結の際、各国が日本と結んだ「サンフランシスコ平和(講和)条約」の場に当時のソビエト連邦も出席していました。
しかし、「アメリカ軍が日本に駐留すること」などの条項に反発し、署名を拒否しました。
以降、日本とソ連、及びその継承国であるロシア連邦との平和条約は2022年現在も結ばれていません。
日本とロシアは停戦中?
平和条約とは戦争状態を集結させるための条約です。
この条約を結んでいないということは、通常は戦争が終わっていないことを意味します。
このことから、「日本とロシアは現在停戦(休戦)中」「日本とロシアは戦争状態」と言われることがありますが、実はそうではありません。
平和条約は戦争を終わらせるための条約ですが、その締結が「唯一の方法」というわけではありません。
平和条約を結ぶことが困難な場合、別の方法で戦争を終結させる手段もありえます。
日本とロシアの場合は「日ソ共同宣言」が戦争終結の条約にあたります。
ソ連がサンフランシスコで平和条約への署名を拒否した後も、日本とソ連の間では平和条約の締結が模索されていました。
ですが、北方領土の問題になると、どうしても交渉が難航してしまいます。
そこで、「一旦北方領土は置いておいて、とりあえず戦争状態を先に終わらせ、国交を正常化しましょう」ということで話がまとまります。
そうして締結された条約が「日ソ共同宣言」です。
これにより、1956年12月12日、日本とソ連(ロシア)との戦争状態は正式に終結しています。
日本とロシアの平和条約交渉とは?
戦争状態が終わったのであれば、今回ロシアが発表した「平和条約交渉の打切り」とは何のことでしょうか?
これはつまり、「北方領土問題の話し合い」を打ち切るという意味です。
前述の通り、日本とロシア(ソ連)は北方領土の問題が解決しないため、平和条約を結べず「共同宣言」を採択する形で戦争を終わらせました。
北方領土の問題だけは先送りにしていたのです。
今、「日本とロシアの間で平和条約を結ぶ」ということは「北方領土問題を決着させる」ことを意味します。
これをロシアは打ち切ると発表しました。
先の「日ソ共同宣言」の中に、「平和条約締結後に歯舞諸島と色丹島を日本へ引き渡す」との条項があります。
1956年の時点で4島のうち2島の処遇が決まりかけていましたが、その後70年近く経った今でも解決していません。
今回の「ロシアの平和条約交渉の打切り発言」によって、北方領土問題解決は遠のいてしまったことは間違いありません。
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