お正月になると、日本では「鏡餅」を飾る習慣があります。
あまりにも当たり前になっているのであまり意識することがないかもしれませんが、冷静に考えてみると、結構不思議な飾り付けです。
葉っぱの上に餅を乗せて、さらにその上にみかんを乗せて家中に飾ります。
意味がわからないと、おかしな儀式に見えかねません。
なぜお正月にあのような飾り付けをするのでしょう?
鏡餅の葉っぱは何という植物?
まず、鏡餅の下に敷いてある謎の「葉っぱ」の名前から確認しましょう。
ギザギザのあの葉っぱの名前は「ウラジロ」といいます。
漢字で書くと「裏白」。
名前のとおり裏が少し白っぽいのが特徴です。
このウラジロを鏡餅に敷く意味は、実はよく分かっていません。
「単に白が縁起がいいからという説」、「白にちなんで白髪になるまで長生きすることを願うとする説」、「表は緑で裏が白なので、表に色がついても裏(心)は白くあるようにと願う説」などがありますが、実際のところは不明です。
鏡餅の上にみかんを置くのはなぜ?
鏡餅の上に置くみかんは「ダイダイ」という名前の柑橘類です。
普段我々が食べるみかんとは違う種類のもので、一つの株に数年代の実がつくという特徴から「代々」と呼ばれるようになりました。
鏡餅に乗せるのは「ダイダイ」が「代々栄える」に通じ、縁起がいいからとされています。
ちなみにダイダイは酸っぱいのでそのまま食べるのには向きません。
マーマレードやポン酢などによく使われています。
鏡餅の由来
鏡餅は「年神様」への供え物です。
年神様とは「大年神」のことです。
日本神話に登場するスサノオの子で、古事記にも登場する穀物の神様です。
日本では農業が発展していくに連れ、年の始めにその年の豊作を祈願する風習が出来ました。
鏡餅もそういった風習の1つです。
「鏡餅」の名前は、文字通り「鏡」に似ているからついた名前です。
昔は、鏡はあの世とこの世の境界であると捉えられていました。
神様に供えるものなので、あの世に届きやすくしたのかもしれません。
鏡餅は平安時代にはすでに存在していたとされています。
現在のような形で飾られるようになったのは室町時代頃のことです。
鏡餅を飾る期間
鏡餅は通常年末から飾り始めます。
飾り始めるのが早くても問題はないといわれています。
一番いいとされるのは12月28日。
8が末広がりで縁起のいい数字だとされるためです。
29日は「9」が「苦」に通じるため敬遠されることが多いですが、逆に「29」を「福(ふく)」と語呂合わせして縁起がいいとする地域もあります。
このあたり、なんでもありで言ったもんがちです。
31日に飾るのは「一夜飾り」といってこれも敬遠されています。
一夜飾りは「一日しか飾らないのが神様に対しての誠意に欠ける」「一夜しか飾らないのはお葬式の飾りを連想させる」ということで忌避されています。
鏡餅を置く場所について
鏡餅は年神様に供えるものです。
一番ふさわしいのは「床の間」とされていますが、床の間がない場合は玄関から遠い奥まった場所がいいとされます。
この他、浄土真宗の家庭では、仏壇前に供える風習があります。
鏡餅とお年玉
今でこそお年玉といえば「お金」のことです。
ですが、その昔「お年玉」は鏡餅でした。
「年神様に捧げたお供え物を家長が子供たちに分け与えた」のがお年玉のルーツです。
「お年玉」は「歳魂」から来ており、年神様に供えた後の霊的な力が宿った鏡餅がその原点だとされています。
お年玉がお金になったのは江戸時代ごろからだと言われています。
鏡餅を食べる日(鏡開き)
多くの地域では1月11日に鏡開きが行われます。
1月4日や1月20日ごろに行う地域もあるようです。
神様にお供えした鏡餅を下げて、無病息災を祈り、その鏡餅を食べるという習慣です。
この時、切腹を連想させるため、餅を包丁で切ってはいけないものとされています。
この頃になると鏡餅も乾燥して固くなっているので、手や木槌などで割っておしるこやお雑煮に入れて食べる家庭がほとんどのようです。
「鏡開き」の「鏡」はもちろん鏡餅のこと、「開き」は「割る」を言い換えた言葉です。
神様に供えたものを「割る」のは失礼だということで、「開く」という表現が使われる様になりました。
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