ロシア軍がウクライナに侵攻を開始した理由の一つにウクライナの「非ナチ化」というのがあります。
これは、「ナチス・ドイツの影響」を除去することを意味します。
ロシアはウクライナの現ゼレンスキー政権を「ネオナチ(新しいナチス)」と位置づけており、「非ナチ化」のために倒すべき対象としています。
ですが、ゼレンスキー大統領はナチスに迫害されていた側のユダヤ系の人物であり、ユダヤ教徒でもあるため、ゼレンスキー政権をネオナチとするのは無理があるという声が多数あがっています。
では、ウクライナにはネオナチは存在しないのかというとそういうわけでもありません。
以下、ウクライナのネオナチとされている組織で有名な「アゾフ大隊」について記載します。
アゾフ大隊とはどんな組織?
アゾフ大隊とは、ウクライナ国内軍組織に属する準軍事組織です。
「国内軍」とは、通常の国の軍隊ではなく、内務省が管轄する軍事組織で活動は基本的に国内に限定されています。
つまり、ウクライナ国内の治安を維持するための部隊の一つです。
正式名称は「アゾフ特殊作戦分遣隊」といい、ウクライナ東部のマリウポリを拠点としています。
クリミア半島併合後の2014年5月に結成された組織で、結成当初は義勇軍(ボランティアの民間の軍隊)でした。
その後のドンバス戦争で戦果を上げ、現在ではウクライナ内務省管轄の国家親衛隊の一つとして活動しています。
ウクライナのネオナチ・極右組織?
このアゾフ大隊と呼ばれる組織は、ネオナチ・極右組織であるとされています。
日本の公安調査庁はアゾフ大隊を次のように表現しています。
2014年の親ロシア武装勢力によるドンバス地方占領を受けて「ウクライナの愛国者」を自称するネオナチ組織が結成した部隊
アメリカ・イギリスなど西側のメディアでもたびたび「ネオナチ・極右組織」として報道されています。
また、アゾフ大隊のロゴはナチスのモチーフである「卍」を少しもじったもので、ナチスの思想との関連が伺えます。
結成当初の極右思想を持つ幹部の多くは、既にアゾフ大隊を抜け、政治活動をしているとされています。
現在、初代司令官のアンドリー・ビレツキー氏は「ナショナル・コー」という極右政党を率いています。
なお、ナショナル・コーの2019年の選挙での得票率は2%ほどで、議席は獲得できていません。
ロシアの言い分は全くのデタラメというわけではない?
アゾフ大隊の存在は、ロシアが主張するウクライナの「非ナチ化」の根拠の一つとされています。
確かにアゾフ大隊はネオナチとの関わりが深いとされています。
国連の人権高等弁務官事務所はアゾフ大隊が「大量略奪・違法な拘禁・拷問」などの戦争犯罪を行っていると報告書で発表しています。
国連組織が認定するくらいですので、その情報にはある程度の信頼性があります。
アゾフ大隊はウクライナの内務省管轄の組織です。
国の組織の一部です。
その組織が人権侵害を行っているのであれば、ロシアの言い分の一部は間違っていないということになります。
ただし、アゾフ大隊はウクライナ国家親衛隊の一組織であり、そこから派生した政治組織は国民の支持を得るに至っていません。
アゾフ大隊の存在のみをもって、ウクライナの現政府全体をネオナチというのは少し無理があることのように思えます。
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